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Sitophobia

拒食症(神経性やせ症・神経性無食欲症)

疫学Epidemiology

本症は主に先進国で認められ、ANは10代、BNは20代に多く、90%以上が女性です。ANの死亡率は6~20%と精神疾患中最高で、主な死因は内科合併症、飢餓、自殺です。

ANの特徴Characteristic

ANの病像のひとつは肥満への持続的で過剰な恐怖です。拒食はその恐怖からの回避であり、過剰な運動や自己嘔吐等は不安を軽減するための儀式行為です。また、病気が親の愛情を得るための手段や現実逃避の手段、過酷な体験への鎧であることがあります。そして、低体重が進むと脳機能が低下し飢餓症候群を呈します。飢餓症候群では、思考力や判断力が低下し、更に強迫性が強まり、情緒不安定になります。背景に制限型では、ASDが過食排出型ではADHDを有する方々が一定数います。

女性 サラダ 若い女性の写真

ANの診断基準Diagnostic criteria

ANの診断基準(厚生労働省特定疾患・神経性食思不振症調査研究班)は次の6つです。

  • 1.標準体重の20%以上の痩せ
  • 2.食行動の異常(不食、大食、隠れ食いなど)
  • 3.体重や体型についての歪んだ認識(体重増加に対する極端な恐怖など)
  • 4.発症年齢:30歳以下
  • 5.(女性ならば)無月経
  • 6.痩せの原因と考えられる器質性疾患がない

治療Treatment

ANでは飢餓症候群による認知機能低下や強迫性亢進のため、低体重では精神療法の効果が乏しく、まずは体重の回復が必要です。標準体重の65%以下では入院による栄養療法の実施が適切であり、55%以下では重篤な身体合併症が生じる危険性が高く、入院治療が必要です。
また、ANでは病識が欠如し体重の回復を拒否することが多いため、入院治療では、認知行動療法(行動範囲拡大療法)が行われます。同療法では目標体重を達成するごとに行動範囲を拡大していきます。同療法は単に体重を増やすためだけではなく、その過程でANの思考・行動パターンを変化させ、ストレスへの対処技能を身につけて適切に対処できることを目標とします。食事療法は、リフィーディング症候群予防のため800kcal/日程度の低エネルギー食から開始し、序盤はビタミンB1、リン、カリウムなどの投与を行います。

当院における治療

制限型(ANR)、過食排出型(ANBP)など下位分類を含め診断をします。BMI(Body mass index)や標準体重を算出し、現在の痩せの重症度を判定します。現在の体重での適切な活動強度(通常の生活が可能、運動の制限が必要、自宅静養、入院による栄養療法が必要)を判定します。
ANでは、低体重・痩せのために飢餓症候群を伴っています。飢餓症候群は、体重や食事へのこだわりが強くなり、抑うつ的、情緒不安定になります。また、認知機能が低下しているため、心理療法や認知療法などの効果が得られないことが多く、健康な最低限の体重まで戻すことが治療成功のために必要です。
通院治療では、心理教育、心理士による認知行動療法(CBT-E)、管理栄養士による栄養カウンセリング、親への栄養指導、心理士による親への心理的支援・心理教育、集団療法参加、併発症への薬物療法を実施します。
入院治療では、認知行動療法(九州大学心療内科の方法に準じた行動範囲拡大療法)を実施します。床上臥床から開始し、1週間に0.5~1kgの体重増加が得られたならば、行動範囲が段階的に拡大されていきます。栄養療法と肥満恐怖への暴露反応妨害法を併用します。800~1,200kcal/日などの低エネルギー食から始め、段階的にエネルギーを増加します。
これに加え、心理士と毎日、心理教育やカウンセリングを行います。入院中も通院と同様に栄養カウンセリング、家族への栄養指導、親への支援・心理教育、集団療法を実施します。親への治療状況の報告も実施します。信頼関係を築き、退院後の通院治療につなぎます。
ANの患者様は学生の方も多く、登校可能な体重に達した後は、入院中の登校支援を行っています。

思春期心の健康会 思春期心の健康会抄録

文献Literature

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札幌市太田病院(精神科・心療内科)
〒063-0005
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電話011-644-5111

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