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ADHD(注意欠陥多動性障害、注意欠如多動症)とは、発達障害の一種です。年齢あるいは発達に見合わない、不注意おちつきのなさ、衝動性などの問題が、生活や学業に悪影響を及ぼしており、その状態が6か月以上持続していることと定義されています。脳機能の発達や成熟に偏りが生じた結果と考えられていますが、その原因はまだはっきりとわかっていません。特徴的な症状として、年齢あるいは発達に見合わない「不注意さ」、好きなこと以外に対する集中力がなくほとんど関心や興味を示さない「多動性」、思いついたことをよく考えずに即座に行動に移してしまう「衝動性」が見られます。場に応じてコントロールすることが苦手な状態のため、様々なミスや不注意などの症状が他に人と比べて目立ちやすくなります。
そのため、職場や家庭での日常生活に支障をきたすことがあります。遺伝的な素因や周産期の問題、環境要因などが複雑に関連して症状が現れると言われており、子供全体のうち約5%がADHDと診断されています。特に男児は、女児より3-5倍多いことも知られています。
ADHD(注意欠陥多動性障害、注意欠如多動症)では落ち着きがなく、授業中も着席していることができずに動き回ったり、常に体を動かしたり、衝動的で急にしゃべりだしたり、他人のやっていることに唐突に介入するために、先生から注意を受けることがあります。注意症状や多動、衝動性から親や周囲から怒られるなど失敗経験が多く、仲間からも疎外され、自己評価が低下し、うつ病や不安症など二次障害を呈することが多いです。また、親や教師に反抗する反抗挑戦性障害(ODD)から行為障害(CD)、反社会性パーソナリティ―障害へと進展するDBDマーチ(Disruptive Behavior Disorder:破壊的行動障害)を呈することもあります。一方で、人懐っこく、明るく、フットワークが軽く、行動力があるなどの強みもあります。ADHD(注意欠陥多動性障害、注意欠如多動症)は、子供だけにみられる障害ではありません。軽症の場合は、小児期に見過ごされ大人になってうつ病や不安症などの二次障害のため、精神科医療機関を受診して発覚することが多く、2~5%の大人がADHD(注意欠陥多動性障害、注意欠如多動症)の診断基準に当てはまると言われています。
大人のADHD(注意欠如多動症)では、注意の持続が困難だったり、細部に注意が向かないために仕事や家事でケアレスミスや物忘れが多かったりします。あるいは、しばしば約束の時間に遅れたり、約束を忘れたり、締め切りに間に合わなかったりします。
子供の時に見られた顕著な多動性や衝動性は一見目立たなくなりますが、待たされた時などにイライラして落ち着かなかったり、人の話を最後まで聞くことができず、さえぎって一方的にしゃべってしまったりするような形で現れたりします。
ADHD(注意欠如多動症)の大人は、本人の人間性や知能などに問題はないのに、社会適応性が悪かったり、親密な人間関係の持続が困難になったりすることが多いので悩むことになりがちです。そのため、自尊心が低下して、うつや不安の状態になります。
仕事や人間関係がうまくいかないために生きづらく感じる、あるいは抑うつ気分や不安感が強い人で、以下の項目に多く当てはまる場合はADHD(注意欠如多動症)がその原因の可能性があります。
ADHD(注意欠如多動症)の治療には大きく分けて、「薬物療法」と「心理士によるカウンセリング」の2種類があります。治療に取り組んだからといってすぐに治るという病気ではありませんので、治療は治すことを目指すのではなく、病気を持っていても普通の人と同じように日常生活、社会生活を送ることができるようになることを目標とすることが大切です。あきらめずに根気よくケアに取り組めば、症状をコントロールでき、他の人たちと同じように日常生活、社会生活が送れるようになります。その積み重ねで、本人の成長と共に病気が治る可能性があると理解することが大切です。
薬物療法でお出しする薬(コンサータ)は、ノルアドレナリンやドーパミンといった脳内物質の不足を改善する効果があり、それによりADHD(注意欠如多動症)特有の症状を抑制する効果が期待されます。また、ADHD(注意欠如多動症)の傾向のために、周囲の人間関係や環境ストレスにより、うつ病や不眠の症状を伴う時には、患者様とご相談の上で、適宜抗うつ薬や睡眠薬を併用することもあります。
心理社会的治療(カウンセリング)では苦手としていることや、ミスや衝動の起きやすい状況を心理士と共に確認しながら、タスク(仕事)をリスト化する方法など、日常生活で取り組める行動を中心に、心理士が患者様と共に段階的に行動が変えられるように促していきます。
ADHDは子供の障害と思われがちだが、大人のADHDは人口の5%程度に存在すると言われています。男性に多く、ADHDの症状は原則として幼少時の方が強く、成長するにつれて軽減するが、症状始まる残ることが多い傾向にあります。特に不注意症状は大人になっても続くことが多く、近年の海外の報告によると、成人期にADHDと診断された患者の多くは、幼少期にADHDの診断を受けていなかったことがわかっています。
大人になってからADHDに気づかれる場合は不注意型が多く、知能が低いわけではないため、小児期に気づかれる場合と比較すると障害の程度は軽いことが多いです。しかし、ADHDの特性上、仕事や家庭生活で困難を抱え、離職や離婚に至ることも少なくないため、学校や家庭などと違い、職場では厳しい状況に陥りやすくなります。
二次障害としてのうつ病や社交不安障害、併発症としての双極性障害、アルコール依存症、ギャンブル依存症、インターネットゲーミング、スマホ依存、性依存、過食嘔吐などの治療を目的で医療機関を訪れる患者様が多くいらっしゃいます。また、自閉スペクトラム賞(ASD)とは互いに50%が併発すると言われています。
診断は、幼少期からのADHDエピソードについて親と本人から詳細に聞き取り、通知表なので確認し、行動の観察、知能検査やADHD検査を行い、総合的に判断します。
治療は、心理教育、生活改善、環境調整、薬物療法を実施。抗ADHD薬が有効なことも多いです。
また、ADHD薬としてはメチルフェニデート、アトモキセチン、グアンファシン塩酸塩などがあり、二次障害には症状に応じて薬物療法を実施します。
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札幌市太田病院(精神科・心療内科)
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